ブレーメン

河井克夫『ブレーメン』

本作『ブレーメン』は、90年代の末期『ガロ』から創刊されたばかりの『アックス』に掲載された作品を収録した短編集で、作者のキャリアにおいては初期のものになる。ゆえにだいぶ荒削りな筆致であることは否めないが、ブラックな持ち味はふんだんに発揮されている。帯には評論家の唐沢俊一が本作を評して「情念とバカの理想的化合」というキャッチコピーを寄せている。なるほど……「情念」はそのまま『女の生き方シリーズ』『日本の実話』といった作品たちにも反映されるわけだし、「バカ」というのはつまりナンセンスであるということだろう。「そもそもこんなバカバカしいことを思いつき、それを作品に描いてひとさまに見せようと考えること自体がヨモスエなのだが、ヨモスエなればこそ河井克夫の作品が読めるというのなら、私はヨモスエに生まれたことを感謝したい気持ちになるのである」とまで。

漫画家のみならず役者としても活動する河井克夫さんのプロフィールには、去年から出演作として『あまちゃん』がトップに躍り出ている。役回りは「海女のアキちゃんの評判を聞きつけて東京からやってくるアイドルオタク」というものだったはず。NHKの朝ドラで、河井さん(オルタナティヴな漫画家という顔を持つ)が活躍をしていて、そして言うまでもなく宮藤官九郎、大友良英といった面々が八面六臂の活躍を果たし、その年最も大きな功績を残した作品として記憶されるテン年代。これも、ある意味ではヨモスエなればこそであろうか……。

この作品集は、シュールに走っているし、明るくない。おそらく暗い。そんな未来が待っていようと誰一人として考えてもいなかった。アリバイといったらナンだけれど、とにかく活動を続けているとそういうことがある。河井克夫さんの作品を未読の方は、とりあえず前述の『女の生き方シリーズ』『日本の実話』をまず読み、お気に召した場合は本作を読むのが良いのではないかと思う。
(方便凌)

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ブレーメン / 河井克夫
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発行日: 2000/02/29