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河井克夫『女の生き方シリーズ』

女心は大きな海のようなものだというのは、穏やかな慈愛も激しい憎悪や嫉妬もすべてひとところに湛えてしまうということ……じゃないですかね? こんなベタベタな文句を持ちだしてしまってどうしよう。ただそれでもたったひとつだけ言える今更な結論は、海は恐ろしいところだということ。本作に描かれているのは皆、すれっからしの女たち。これは、すれっからしの女たちのすれっからしの人生の数々が、決してマイルドとは言えない筆致で綴られた不穏な短編集。作品によってタッチもスタイルも全然異なるのは、漫画家のみならず役者であり音楽家でもあるというマルチタレントな作者ならではの目配せか。明言し難い作風をどうにか言葉で表すならば、「不条理&シュール&ブラック」。いかにも『ガロ』らしい、と言っていいだろうか。オルタナティヴな空気感が通底している。しかし、その「いかにも『ガロ』」な雰囲気なのにも関わらず女たちの恋愛や子育てを主題に据えているところが本作の面白いところでしょう。なんにせよ、「女の生き方のススメ」みたいなハウツーからは百万光年離れた場所にある一冊(教訓を得ることはできるかもしれない)ですから、男性にも女性にも等しくオススメです。

ただ、本編も良いのですが、個人的には巻末に別刷収録された『オートロ』が好きだったりします。初期の貸本劇画のスタイルを踏襲した扉絵をめくると、遭難者の一団が砂漠を彷徨い歩いている。熱と飢えにうなされながら、砂海の真中で一行が発見したものは……。これは、諸星大二郎の漫画で読んだやつだ! しかしもちろんあくまで換骨奪胎、元ネタとはまた異なる方向にひとひねりを加えた結末が。引用的センスをあくまでローファイにエイヤと発揮するあたりにLate 90’S(『オートロは』98年に発表された作品)という季節との共振を感じる。

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女の生き方シリーズ / 河井克夫
販売価格(税込): 1,365 円
A5判並製
発行日: 2003/03/31