B2450-00

花くまゆうさく『ダメ人間グランプリ』

ダメ人間あつまれ! 本作は、ダメ人間の生き様を描いた短編集。ただそれだけだ。

街を歩いていて、誰かの狼藉にビックリしてはムッとなることは往々にしてある。言うまでもなく、想像を絶するインクレディブルな外道野郎は現に存在する。が、本作に登場するダメ人間たちは、普通のダメ人間を二乗も三乗もしたような、輪をかけたダメ人間たちばかり。無職、コミュ障、自称芸術家、童貞、変態性癖、犯罪者……その数69人。69通りのヒドいエピソードが矢継ぎ早に展開される。そのあまりのエクストリームなダメさは現実的ではないが、それでもダメ人間が抱える哀愁は変わらない。本作は人間のダメさ―情けなさや意地汚さをとにかく誇張し戯画化したギャグ漫画なのだ。

ところで本作では“ダメ人間だけに見えるパートナー”がそっと毎度のように現れてはダメ人間たちを嘲笑し、そのダメさ加減に「オエー」と吐き気を催す。うーん、このキャラクターがなかなか残酷。というのも、たくさん血が流れたり汚物にまみれたり、他人に危害を加えたりというような形で目を背けたくなる残酷さだけを描いた漫画というのは、そのいかにも悪い人に嫌悪感をぶつけて、その人のせいで暗い気持ちになればいい。しかし、この作品はそうした単なる悪辣さを描いて終わるのではなく、“パートナー”が現れてダメ人間(ダメにもいろいろと理由がある)を高みの見物で嘲り続ける。でも、そもそも他人を「お前はダメクソゴミ野郎だ」と嗤えるメンタリティって何なのよという話。優越感で悦に浸っているお前はどれだけ偉い存在だというのか。この“パートナー”とはいったい誰のことだろう? それはきっとこの「ダメ人間グランプリ」を観戦している我々読者なのだろう。だからこれは結構、後味が悪いですよ。とは言っても、ダメな他人を見下しては嗤うことなんて、インターネットでは至る所で行われている。こうしたメンタリティを多かれ少なかれ現代人の誰もが抱えているのだ。踊るダメ人間に見るダメ人間。虫けらが問いかける。「キミの人生星いくつ?」と。決して救われることなく死んでいく魂たち。ああ、本当に残酷。

そういえば花くま先生といえば、小田急線のマナー広告を描かれていて近頃毎日見かける(小田急ユーザーなので)けれど、アレも程度の差はあれダメな人たちを告発する側面があるけれど、実はもっとエグいものを書いているぞと。

Buy Now

ダメ人間グランプリ / 花くまゆうさく
販売価格(税込): 1,365 円
A5判並製
発行日: 2007/07/31