pettori_cover_ol-1

堀道広『部屋干しぺっとり君』

先日のアックス大忘年会に登場した堀道広さんは右鎖骨を骨折していた。当日はずっと雨が降っていて足下が悪かったのだけど、そんなさなか、イベントの準備中にバイクで転倒されたらしい。どうし、こんなタイミングで。そのうえ前日の夕方にお子さんが産まれたとのこと 。おめでとうございます。以前にはレーシック手術集団感染事件などでマスコミを賑わせたこともあり、堀道広さんの身には常に”何か”が起きていて、今回の件も人々を唸らせるものがあったように思う。とても、不思議な方です。『アックス』96号では単行本『部屋干しぺっとり君』刊行を記念した堀道広特集が組まれており、堀道広さん自身メンバーの一員であるベンチウォーマーズ(以前にこのブログでも『カレーキャラバン』『自己満本』紹介しました)の面々による企画や、師弟関係にある久住昌之さんとの対談など、親交の深い方たちによる愛に満ちたページが展開されているのだけど、飄々とした堀道広さんを周囲の個性豊かな人たちが取り囲んでダシにしている図が目に浮かぶというか、結局、堀道広さん自身のことはよくわからないままだったような気がする。だけどそれは、きっとそういうものなのだろう。しまおまほ・根本敬両名による本作の帯文も、核心の部分を周到に回避しているように思わざるを得ない。

本作は、以前自費出版された『ぺっとり君』に加えて、これまで各所に掲載されたまままとめられていなかった作品などを収録した短篇集。まあ、基本的にはその自費出版verの『ぺっとり君』レビューをご覧いただければ、という感じです。表題作『ぺっとり君』もリライトされているんですね(わかるといえばわかるような気もするし、よくわからないといえばわからない)。新たに収録された『焼き鳥ファクトリー 刺すか笹塚』は焼き鳥工場に勤務するフリーター・笹塚が奇妙な人々に出会うお話だが、珍奇なエピソードがしれっと実話に基づいたものだというからすごい。秀逸な作家は往々にしてそうなのかもしれないが、異なるものへのエンカウント率がやはり高いのではないか。そうした経験や見聞だけで抜群に面白い本が作れてしまいそうだなとフト思う。

それにしても、今回再読して『コンビニ』は改めて素晴らしい作品だなと思いました。これから初めて読むことのできるアナタがとても羨ましい。前回のレビューから引用しましょう。「どこまでも畦道が続く田舎の町に、初めてのコンビニが出来るという噂に、住民たちが静かな希望を抱くというお話。三段組の画面構成を固持することで一定のタイム感を保ちながら淡々と描かれ、ゆるやかな盛り上がりとともに、クライマックスに向けて人々が一所に集まってゆくさまは映画的と言えます。無論、最終的に彼らの期待は見事に横滑りをするわけですが、最後のページで得られる“逆ベクトルのカタルシス”には見事というか、やはりすごいとしか言いようがありません」

Official Site

堀道広歳時記

Buy Now

部屋干し ぺっとり君 / 堀道広
販売価格(税込): 945 円
B6判並製 172ページ
発行日: 2013/12/25