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杉浦茂『怪星ガイガー・八百八狸』

このまんがは『怪星ガイガー』と『八百八狸』の二編を収録したものです。タイトルの通りだが。どちらもめでたく初の単行本化、とはいっても、いずれも杉浦茂節の炸裂した傑作ですから、ライトファンからマニアックなファンまでマストな一冊なのは間違いないのです。ピリピリー、はじまりだーい。

『怪星ガイガー』。天才科学少年ロケットボーイと助手であるダルマのダルちゃん(可愛すぎる)が暮らす研究所には今日も不思議なものがいっぱい。奇怪な発明品もさることながら、”コケコッコーのねえちゃん”がせっせと飛び出してきて卵を産んでいくところなんて、「ぽーん」という擬音を含めていかにも楽しい。しかし、彼らが天体望遠鏡を使って新しく発見した惑星をめぐり、何やら不穏な影がしのびよる……。破天荒なデザイン、飛び回るキャラクターたちの躍動感、一コマ一コマの賑やかさ、どれをとっても素晴らしい! これはさすがに流石としか言いようがないような。加えて、元の原稿が奇跡的に発掘されたおかげで、美麗な印刷で読むことができるというのが嬉しい。

「ちきゅうではかがくがすすみすぎてすいばくとかコバルトばくだんといった、いやらしいものをこしらえてしまって、かえってもてあましているのよ」「あんまりおりこうじゃないね」

そもそも《ガイガー》とはガイガーカウンター(放射能測定器)のガイガー(さらに言えばそれは、ハンス・ガイガー博士の名前からとられたものだけれど)でしょう。『猿飛佐助』にもコバルトばくだんを揶揄するシーンがある。摩訶不思議無重力WORLDを描き出すサイケの天才が、直接的にポリティックでクリティックなメッセージを発しているほぼ唯一の例ではないだろうか。そして、50年以上も前に発せられた警鐘に対して未だに”何か”を思わざるを得ないというのは……いや、これらのゆかいな作品を前にしてつまらぬことを言うのは止しておくべきだ。

『八百八狸』。百姓の子・稲生平太郎が仙術と父から受け継いだ木槌とともに、因縁の悪狸どもを成敗し掴むサクセスストーリー。狸の歌あり、プロレスあり、うまい飯ありと楽しくないわけがない。稲生平太郎も生まれたころからわりと最強だったとはいっても、登場時から既に最強っぷりが完成されていた猿飛佐助に比べると、鍛錬する過程があったりして、なかなか可愛いものです。

ちなみに。この青林工藝舎より刊行されている杉浦茂傑作選集第一弾である本作には、初版限定でハードカバー+各界のファンによる《杉浦キャラ似顔絵大会》企画を見返しに収録した仕様が存在する。大会参加者は呉智英、みなもと太郎、スージー甘金、荒木経惟、本秀康、根本敬、佐々木マキ、花輪和一、勝又進、たむらしげる、吾妻ひでお、湯浅学、などなど……! いや、枚挙すれば暇のない超豪華メンバーが各々の解釈による杉浦キャライラストを寄稿しているので、もしも機会があればぜひチェックしてみてください。

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普及版 怪星ガイガー・八百八狸 / 杉浦茂
販売価格(税込): 1,050 円
B6判並製
発行日: 2012/08/12