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古泉智浩『これが未来だぜ!』

1986年、ミニバンに乗って「バック・トゥ・ザ・フューチャー」さながら20年後の未来からやってきた男が高校生を現代へと連れてくる。半重力エンジンやロボット、宇宙旅行といった人々が過去に想像した未来は、いまだその夢を実現し得ていない。これが未来……。このようなプロローグから本作は始まる。郊外の若者が抱える焦燥感を独特の筆致で描き出すことで定評ある古泉智浩にとっては異色の(?)SF作品集である。アトムは2003年までに誕生していたはずだし、ドラえもんの誕生まで残り100年を切ってしまった今では、その果てなき無限大の夢を抱いて育った世代にとって、現代に対していくばくかの停滞感を感じるのは致し方ないことではある。むしろ、想像力というものはそれだけ天衣無縫なものなのであって、未来を展望せんとするその活力に希望を見出すべきでもあるし、この21世紀に失望するよりも前に、そうした20世紀の夢にある種の羨望にも似たノスタルジアを感じなくもない。俺たちの未来は、もっと暗い……。科学技術の発展は我々人類により洗練された生活を提供しないし、そもそも時代を切り開いていくような金も活力も人材もない。ゆえに悲観はしている。しかし重要なのは、だからといって自分たちが不幸であると思っているとは限らないということである。そうしたディストピア的な世界観を前提に、これからの世代は生き抜いていこうとしているのである。《これが未来だぜ!》という言葉には、そういう意味での達観した響きがある。

こうしてつらつらと書き連ねて来たものの、残念ながら(?)本書はそのような21世紀を生きる人間のマニフェストたる内容ではない。頭の中がエロでいっぱいの中学生が、宇宙人に魔改造されたことで、勃起時に怪人に変身しその力で地球を侵略せんとする宇宙人(こちらは悪者の方)を倒す使命を負うハメになる『変身エロイダー』など、SF設定を取り入れつつもわりと普段の感じの作品が収録されている。しかし前述の『エロイダー』を筆頭にギャグタッチのものが多く、氏の作品群のなかでは最も純粋にエンターテイメントを追求した作品であると言えるだろう。

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これが未来だぜ! / 古泉智浩
販売価格(税込): 1,155 円
A5判並製
発行日: 2006/08/31