表紙L

きみ『ゆめのあと』

漫画家、イラストレーターとして活躍する作者の、コミティア106にて発表された最新作。可愛らしい女子と男子がモチーフのメルヘンチックな世界がその持ち味。本作も表紙からしてキュートなピンクで、フラワーな雰囲気を感じさせてくれていますが、しかし作者は自作のことを「ちょいグロメルヘン」と解説していますので、その点は読む前に留意しておきましょう!

 舞台は、少子化が進行しほとんど人がいなくなってしまった未来の東京。そのディストピアな世界では、人間の代替品としてアンドロイドが流通・売買され、ひろく人々に使役しているようだ。主人公の青年は、中学の頃、文章を書くことが好きな少年だった。ノートのなかに夢の世界を描いていた。そして、その夢をクラスメイトのある女の子と共有しながら楽しい日々を過ごしていたのだが、いつしか彼女は転校して去っていき、時間の経過と共に文章を書く夢も失っていった。今ではアンドロイド工場で出荷前の検品作業に従事をしている。しがない毎日だ。そんな彼がいつものように工場に出勤すると、そこに並べられていたのはあの日ふいにいなくなってしまった彼女にそっくりのアンドロイドたちだった。不思議に思いつつも作業を始めると、そのうちの一体が話しかけてきて……というところからお話は始まります。やがてそこに至るまでの経緯が語られるのですが、それは是非本編を読んでチェックしていただければと思います。なんというか、主人公の彼は草食系を地で行くというか、状況に対して非常に流されやすいところがありますね。想い出のあの娘にそっくりのアンドロイドに遭遇して「?」と思いつつも、仕事をしてしまうあたりとか……そこは、思うところがないのかお前! と。そんなんだから知らぬ間に歳をとって夢を諦めてしまうんだよ! なんて。しかし本作は、失われてしまった本来の夢を取り戻す物語だ。また、八方塞がりの状況における、ファンタジーの存在意義を説く作品でもある。「わずかな人々と空っぽの街」に待つ、先細りの未来に向かって彼は、これからどんな風に歩み始めるのでしょうか。

 もう一本の短篇『リスカメイト』は昨冬頃に発表したコピー本を再録したものとのこと。一見するとナイーブそうな、可愛い顔をした少年が、ガラクタ集積場で出会った女の子の前でかなり大胆な行動を……。「本物の女の子とあまり話したことがないからさ~」と言いながら自分の手首をカッターで切り裂いてしまうこの男気は一体。話の筋自体はハッピーエンドなのだけれど、血を流し、痛みを分かち合いながら、一緒に見上げる夕焼け空になんだかドギマギ。

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めとろん

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「夢のあと」 / METRON
販売価格(税込): 525 円
A5判 60ページ
発行日: 2013/10/20