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甘茶茂『トレン・ケプタ・ロリン』

この「ブック狂」で今日までたった一人で狂ったように記事を書き続けてきた男、方便凌はときたま人前でギターを弾いたりする機会があるという、いわゆるバンドマンと呼ばれるタイプの人間であるわけだが、彼の父親が買い与えたものの全く練習をせずクローゼットのなかに仕舞い込んでいたショートスケールというか子供用サイズのアコースティックギターを自分の意志で弾くようになったのは中1だか中2の頃だった。年相応の選択である。アコースティックギターは、それはそれで素晴らしいものではあるが、誰かとバンドをやるとなればそこはやはり「エレキ」が欲しい。初めてエレキギターを手に入れたのが卒業間際、高校入学祝いという名目でやはり買い与えてもらったものである。これはいかにもゆとりっぽいというか、どうもロック感に欠けるエピソードのように思える。

本作『トレン・ケプタ・ローリン』の主人公である男子はアルバイトをして中古のギターを買うらしい。ローリング・ストーンズに憧れてテレキャスターを買うことに決めたのであろう彼は、昔ながらのロック少年といった趣きで、良い。きっと彼は、親と何かしら揉めたりもすることもあるのだろう。方便凌がギターを買ってもらったように、最近の親は我が子のロック活動をわりと応援し見守る傾向がある。学校の軽音部に入れば顧問の先生が指導があり、YAMAHAか何かのコンクールだったり「閃光ライオット」みたいなイベントに送り込まれたりする。直近で一番ヒットしたバンド漫画といえばやっぱり『けいおん!』だと思うけれど、あの作品ではそういう話は出てこないし、ギター(ギー太)もなんだかんだアルバイトして買ったわけで、そこは伝統という感じがする。

作品の話。ロックに興味のない少女とロック少年を繋げる一本のギター。ダニエル・ジョンストンやら尾崎豊やらといった古今東西のロックネタを持ち出しつつ、決して誰も語らない青春の1コマを描きだす。やはりその手の音楽が好きな方はきっと楽しめることでしょう。とはいっても話の筋はボーイ・ミーツ・ガールですから、ロックファン以外の方にも是非読んでみてもらいたいですね(ロックファンは、ロックネタを一般人にぶつけて反応を見るのが好きだと思う)。

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「トレン・ケプタ・ロリン」 / 甘茶茂
販売価格(税込): 105円
A5判 12ページ
発行日: 2013/10/20