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関根美有『ポッペーパーク』

ただ一本の鉛筆でサラサラ描かれ、ペラペラの紙に印刷されて、デコボコに綴じられて、近しいひとびとに読まれる漫画。素敵なモノの在り方だと思いませんか。やはり経済というものはクソ、いやTPOにも依るけれど、人々の在り方をコントロールしようとするものであって、それがあれば豊かになれるというようなものではないと思うのです。殊に、様々なツケが重なりに重なってもうどうにもならなくなってるのではないか? というムードが広がる昨今では、大資本的な価値観に対するオルタナティヴをひとりひとりが提示すること、小さな生活圏のなかでいかに充足した生活を送るべきかを考えるということは、今後あらゆる人々が直面するであろう喫緊の課題でもある。そういう意味で、関根さんという存在はそんなオルタナティヴを体現しているようだと、俺は常々思っている。

関根さんの作品はどれもが傑作だ。どの漫画を読んでもサイコーだと思う。そしてそれでいて、過去には商業誌で連載していたこともあったのにも関わらず、これまで一度も一般流通本がリリースされていない。本当に知る人ぞ知る存在というやつでとてもかっこいい。関根さんの作品がもっと広く読まれてほしいというのは、エゴなのだろうと思う。たしかに、関根さんを中心とするスモールサークルを遠巻きに眺める読者のひとりとして、それぐらいのことは当たり前に思うのだけれど、それは恐らく違う。広く読まれるために何かを犠牲にした結果失われるものがあるとすれば、そこに関根さんの作品の一番重要なところが詰まっているんじゃないかという気がしている。ゆえに、オルタナティヴであり続けることは必至。こんなにイイ作品たちが安易に消費されずにひっそりと読まれているという事実がいかに贅沢なことか、そして単純に金が潤沢に回るということとは正反対の、そういう贅沢ができるというそのことこそがどれだけアナーキーなことかというのを誰しもが一度考えてみてもらいたいですよね。実際、載るところに載ればそれなりに人気が出ないこともないと思うのだけれど、どうなんでしょう。少なくとも言えることは、このスモールサークルには自分の足を使わないとアクセスできないということ。本当に大切なことはアマゾンやグーグルみたいになんでもかんでも自動でレコメンデーションしてくれるとは限らない。

関根さんの作品には、日々の暮らしに対する誇りと自信がある。芸術に対する矜持と忠誠心がある。知恵と知識に対する尊敬と実践がある。真摯な若者の眼差しと優しい母親の慈しみがある。悪人は登場しない。新作『ポッペーパーク』はコピー用紙に印刷されA4版にホチキスで綴じられている。表紙を除いてすべて鉛筆一本で描かれている。天才科学少年・ポッペーパークはコーヒー型ロボット・ミルミルを開発し、一緒に世界中で遊びまくっている。ロボットは効率的な情報処理を追求するために不要な情報は忘れるようにできている。それでも日々の積み重ねだけが我々にもたらしてくれるものがある。残るべきものが残ればそれだけでいい。シンプルな教訓をシンプルな線で描いた作品だが、本筋とは直接関係のないセリフやコマに味がある。だから読み終わったときに、なんとなくイイ。ポッペーパークとミルミルのようになんだかわからないけど満たされた気持ちになっていればそれで正しい。今回はきっと、そんな作品ではなかろうか。

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「ポッペーパーク」 / 関根美有
販売価格(税込): 200 円
A4判 16ページ
発行日: 2013/10/20