君の友だち

本秀康『君の友だち』

漫画家としてだけではなく、絵本作家やイラストレーターとしても幅広く活躍する本秀康の、99年のクリスマスに刊行された単行本第二作。

ひとことでは言い表すことのできない複雑な心境であったり、取り返しのつかない事態を起こしてしまったときのようなすわりの悪さだとか、いろいろなことがあったけれど、なんだかよかったなァなんていう気持ち、etc……。そんな”なんとも言えない感じ”が持ち味であると言える氏の作品。前作『たのしい人生』で時たま見受けられたブラックさは後退し、よりポップな手触りで、”なんとも言えなさ”がヴァージョンアップされている。なんとなく音楽に喩えたくなってしまうけれど、これがセカンドアルバムというのはなんだか納得するところがある。勢いと安定感があるということだろうか……。あとがきによれば、99年の前半は半年間仕事を休養していたとあり、その頃にゆったりとしたペースで制作された作品が本書の前半を占めている。

前作にも収録された同名作のヴァージョン違いで、本作の表題作にもなった『君の友だち・木星編』。ストーリーなどは同じだが、元ヴァージョンに比べると身も蓋もない感じが若干薄れている。「恋をすると必ずロンバケ以降の大滝詠一を聴きあさる林くん」が鏡の妖精に恋の相談を持ちかける妄想記『フラレた気持』。時代錯誤の青年が小さい子供のような妖精に振り回される様が実に愉しい、ライチャス・ブラザーズの名曲タイトルを冠した思春期コメディ。個人的なフェイバリットは『メドレー(a)終りなき20世紀(b)レイクサイド・ストーリー』。子供が町を散歩していると、空に立ち上る一筋の煙を見つける。ジェット機やボートにメタモルフォーゼするフシギな飼い犬との小さな冒険の末、湖のなかの孤島で争い合うロボットを発見。夜になって、ロボットが指から打ち上げた星屑の美しさに子供は心を奪われる。それだけのお話にも関わらず、作品が湛えるあまりの瑞々しさに感動させられてしまう。星空を見上げる子供の「キレイだなぁ……」という独白には、そのコマの白さと同様にまったく不純物がない。連なる『レイクサイド・ストーリー』では、同じ湖畔にボンヤリと立つ子供が、そこで出会った大人の女性との想い出を、青年になって回想する。子供らしく甘酸っぱいピュアな記憶とほろ苦く寂しい記憶が交錯する、ノスタルジックな憂いを感じる一作。プログレ組曲風のタイトルとは裏腹な、鮮やかで叙情的な作品だ。

『終りなき20世紀』には原案が存在する。巻末にも収録されている『Endless 20th Century』と題されたその作品は、一般的な日本のマンガとは反対に左綴じで逆側から始まるつくりになっており、さらにこちらのヴァージョンでは登場人物たちのセリフがすべて省略されたサイレント仕様になっているのだ。しかし、作品が持つ躍動感や輝きのようなものは全く劣らず、それだけにイラストレーションそのものの力を感じずにはいられない。

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君の友だち / 本秀康
販売価格(税込): 1,050 円
A5判並製
発行日: 1999/12/25

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