花輪和一『赤ヒ夜』『月ノ光』

どちらも70年代頃の作品を集めた作品集である。『月ノ光』は80年に、『赤ヒ夜』は85年にそれぞれ青林堂から刊行された初期短編集の改訂版だ。後者には、新たに『怨獣』(72年『SMセレクト』8月号初出)と単行本未収録作品『進展なき事態』(74年『ガロ』8月号初出)のほか、77年刊行の『花輪和一作品集』に寄稿された赤瀬川原平の解説を収める。

初期の花輪和一の耽美で細密な描画によって繰り出される、退廃的でエログロな作風には、たしかに凄まじいものがあり、いま見ても、目を背けずにはいられない悪辣さがある。そこでは近代的な良識は裏切られ、血と涙と汚物に染まる。それは快楽のための加虐であり、その太刀筋は鮮烈だ。湿っぽく、センチメンタルな語り口ではあるが、語り手も、読み手である我々も、同情を寄せる心づもりはないし、そんな風に読むべきでもないだろう。それだけ反・良識的であるこれらの作品が、のちのち表面的な……たとえば、道を誤らんとする中学生が読むべきバイブルとして、回収されていくのは、ある意味、仕方の無いことでもあるように思う。

しかし、ここに収められた諸作は、ただ悪辣な態度を取るだけではない。まずなにより、伊藤彦造に影響を受けたとされる美麗な線と、ポップなデザイン感覚の妙がある。『髑髏乳』『箱入娘』『赤ヒ夜』では一枚絵のうまさや、構図の工夫を存分に堪能できる。そして、『かいだん猫』の冗談(というか駄洒落)であったり、『因業地獄女「倉」』でのけたたましいテンション(草葉の陰から舅の足を射撃したり、死産の赤ん坊をぶん投げたり、まあすごい)には、端的にいえば、おもしろ可笑しさがある。強迫的でスリラーな筆致にとどまらない、作者のユーモラスな一面を見逃すべきではないだろう。げに恐ろしきはヘンタイでソーロー。

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