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古泉智浩『チェリーボーイズ』

童貞漫画である。国森(通称:クンニ)、高杉(通称:カウパー)、吉村(通称:ビーチク)の冴えない三人は、「やばいぜオレ達」と焦燥感を抱いている。25歳になっても童貞を捨てられなかった彼らは、童貞であるがゆえに、堂々と胸を張ることができない。世界に対して自分が一人前たり得ない。地元の先輩に逆らうこともできず、涙を呑むばかり。やがて三人は童貞を捨てるためにある計画を立てる。童貞を捨てるには、輪姦するしかない、と。

話としてはそれだけで、あとはバカ騒ぎするのみである。褒めるべきところがあるわけでもないし、教訓があるわけでもないのだが……あえて言うのならば教訓のないことが教訓なのであり、ヘタに説教臭く語られるのよりは正しさがある。大人になっても高校生の頃のままの関係で、何かに驚いたり夢中になったりできるのは、いかに冴えない三人であろうと眩しく映る。村上龍の小説でどれが良いかを語り合うシーンは、本筋とも関係のない何のこともない場面だが、良かった。

それなりに物語は進み、遂に彼らは計画を実行する。あえて言ってしまえば、当初の計画は失敗してしまう。だがしかし……。淡白なコマ運びをずっと維持してきたぶん、たっぷりに演出されたラストシーンは、たいしたことを達成したわけでもないというのに、胸が下りるような感動があるから不思議だ。

幸福を追求した方が面白いのは確実であるが、幸福の追求を止めると同時に不幸は消滅し、現場現場での悲しみや苦痛、ネガティブな感情が生じるだけなのだ。ネガティブな出来事や感情を不幸と直結させる事が最悪に不幸だと強く言いたい。幸福なんてドブに捨てちまえ!
(あとがきより)

最後に付加的な情報を。まず、帯文で伊集院光が推薦している(作品内にも氏のラジオが登場)ので、氏のファンの方は是非。また、GOING STEADYの『童貞ソー・ヤング』のCDシングルジャケットのイラストを書いているのは本作の作者、古泉智浩である。

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チェリーボーイズ / 古泉智浩
販売価格(税込): 1,155 円
A5判並製
発行日: 2001/12/25