B2528-00

花輪和一『花輪和一初期作品集』

まずアイテムとしての解説から入ると、本作は長らく入手困難だった著者の初期作品を厳選し、デビューから70年代半ばまでの“因業耽美路線”作品を中心に初収録、未発表作品も加えて一挙収録したもの。同時期の作品を集めたものとして『月ノ光』『赤ヒ夜』が刊行されているが、それぞれに共通して収録されているタイトルも存在する。新たに発掘された『六富道』(これがまた面白い! どうして埋もれてしまっていたのだろう)を読むことが出来るのが本書のウリだろうが、初期ベスト集としてその作品世界の入口とすることも出来る。

花輪は、71年のデビュー当時は、退廃的でグロテスク、時にはナンセンスな作品も描く変態的なマンガ家という扱いをされた。精緻な細密描法で、幕末や明治の旧家に伝わる猟奇的な因縁話のような物語を好んで描いたからである。それは、およそ“高尚な”マンガではなかった。80年代になってから、原律子に見られるように一種のキッチュな懐古趣味として歴史的仮名遣いをわざとマンガに使用することが流行するようになったが、その嚆矢も花輪和一である。むろん、彼の初期作品集の題名が『赤ヒ夜』となっているように、歴史的仮名遣いとして正しいものではない。形容詞の活用語尾がイ音便化して赤シ→赤イとなるのだから、赤ヒではない。しかし、ナンセンスなおふざけとしては、読者に歓迎されるものがあった。

呉智英『現代マンガの全体像』(双葉文庫)

帯の《花輪和一Presents下品醜悪鬼畜的恥辱陰惨淫奔戯画》というコピーがすごい。80年代に入り「中世もの」を手がけるようになり、その作品の性質は変容していったものの、初期の『ガロ』時代のエログロナンセンスなタッチはやはり圧倒的だ。伊藤彦造直系といわれる耽美な線は丸尾末広に繋がり、駕籠真太郎のポップアート的解釈なども経つつ、現在に至っては古屋兎丸が『ジャンプSQ』(集英社)で連載するほどに敷衍化されたものとなったが、ここに収められた作品たちの“陰惨さ”にかけては他の追随を許すものではないと改めて感服させられる。アングラは、糞尿を吹き散らし、良識の盆を返す。そのシンプルなカタチがここにある。

Buy Now

花輪和一初期作品集 / 花輪和一
販売価格(税込): 1,365 円
A5判並製
発行日: 2007/10/25

※只今品切れ中です。