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古泉智浩『死んだ目をした少年』

暴力が怖くてどうしようもなかった。理不尽な要求を突きつけられ、断ると顔面を拳で殴られ、要求を呑まざるを得ない。そんな惨めで情けない事はなく、第一とても痛くて苦しい。そんな経験は記憶として思い返すだけでも胸が引きちぎられるほどつらい。(中略)本当に強いかどうかはともかくとして、「弱者」という自分への認識はまったく惨めでやりきれない。常に何かに怯えていなくてはならず、全然気分よく生活できない。

(古泉智浩『ワイルド・ナイツ』(双葉社)あとがきより)

運動が苦手で自主性に欠ける主人公・犬田は、クラス(読んでいるとわかるけど、この人たち中学生だったんだね)のいじめっ子である魔裟死や強美からご多分に漏れずチョッカイを出され、鬱々とした学校生活を送っていた。「休み時間は困る。何もすることがないし、なるべく誰とも話しをしたくないからだ」家に帰ったら帰ったで、抑圧的な父親のせいで気が休まらない。彼は、彼のヒーローであるブラックデスパイダーマンが嫌いな奴らを皆殺しにする妄想を拡げている。

ある日、犬田は同級生の数宮とともに、ひょんなことから謎の女・釈笛子(『チェリーボーイズ』にも出てた)に出会い、ボクシングの薫陶を受ける。身体を鍛えることで、彼らはいじめに対抗する力を得て、本来の自信を獲得していくのだ。数宮が体育の授業の柔道で不良グループのひとりに勝ってしまってから、少しずつクラス内のパワーバランスが変わり始める。それぞれのグループが空中分解していくなかで、犬田のラッキーパンチが最後の引導を渡す。気がつけば、ブラックデスパイダーマンの姿はもう現れなくなっていた。

作者は運動がとにかく苦手で、『このマンガを読め!2007』(フリースタイル)でのインタビューでは、100m走のタイムなども「やせてたのにデブのタイムだった」と語っている。この体験をもとにしたエピソードは本作にも登場する。そんな作者も空手道場に通い始めたことをきっかけに痛みや暴力への恐怖を克服し、理不尽な場面においても立ち向かう勇気と強さを持つことができるようになったという。

どんな悲惨で惨めな状況であろうとも、いい気分で暮らす精神の強さを身につけたいものだ。単に鈍感であるというのとも違い、問題に向き合い噛み砕いて、それなら仕方ないよねとうっすら笑えるようにありたいものである。問題が曖昧模糊としたままで背中を向けるのが本当に一番よくないと思う。

(同前より)

健全な身体にこそ健全な魂は宿る。それは正しい。ナードであるからこそ、肉体的コンプレックスに打ち勝つべきなのだ。ちょっと自信を持つだけで、世界の見え方はガラリと変わり、生き易くなるのだ。僕も格闘技やりたい。

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死んだ目をした少年 / 古泉智浩
販売価格(税込): 1,155 円
A5判並製
発行日: 2005/03/31

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