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吾妻ひでお『チョコレート・デリンジャー』

80年から82年にかけて『月刊プレイコミック』(秋田書店)上で連載されていた本作は、08年に杉作J太郎監督によって実写映画化されることが決まったのをきっかけに、青林工藝舎から復刊された。当の映画の方は依然として完成していない(しかし、12年に撮影を再開した模様)。吾妻本人の「杉作さん私は何も期待していませんので好きに作ってね」という言葉に、吾妻ひでおの何たるかがあらわれているような気がしないでもない。諦念と幻滅のあとの醒め果てた笑い。すべてはどうでもいいことであり、どうでもいいことは才能だけでチョチョイと仕上げる。天才だからこそ成し得る所業であるが、ゆえにアルコールに溺れ自壊してゆくのもさもあらぬことである。

「不条理探偵ギャグの金字塔」と銘打たれた本作は、やはり驚異的な賜物である。「起承転結の《承と転》が抜け落ちてしまっているがゆえに、意味不明」とあとがきで語られているように、物語をキチンと紡いでいくためのあらゆる制約事やまどろっこしい前後関係を軽々とワープする。超・痛快だ。意味もなく差し込まれる美少女によるお色気シーンや、アナーキーに乱射される銃弾も、娯楽漫画の快楽をただただ加速させる。

「な、なぜだ、なぜそんなにタマが出る?」「これ36連発だもん」「んなバカな、レミントンダブルバレルデリンジャーってやつは」「だってそうなんだもん」

だって、そういうものなのだから。美少女がそう言うのだからそうだ。吾妻ひでお原理主義は正しい。その一方で、『きまぐれ悟空』などに登場する《三蔵》がスターシステム的に登場し、さまざまな変態技でもってアクロバティックに活躍すると同時に、家庭持ちの中年男の悲哀も表現する。ただただ快活な作品のなかで、三蔵の存在は不思議な翳りを見せながら光っている。

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チョコレート・デリンジャー / 吾妻ひでお
販売価格(税込): 1,155 円
B6 判並製
発行日: 2008/01/25

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