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福満しげゆき『生活①』

郊外のとある街に暮らす主人公の青年は、その身を取り巻く環境のすべてと自分自身そのものに納得がいかず、鬱屈とした日々を過ごしていた。そんなとき、偶然にも同じ想いを抱える仲間たちに出会い、やがてひとつの計画を実行することを決意する。それは、街に蔓延る悪人たちを成敗する、世直し活動だった。

福満しげゆき初の長編ストーリーマンガであり、まごうことなき傑作のひとつ。持たざるもののリビドーと復讐、物騒なニュース賑わうゼロ年代の不穏な空気感、群れる人間のいかがわしさ、諸行無常観、随所に挿入されるコミカルなギャグ、アップテンポなアクションシーン。どれも福満しげゆきにしか描き得ないものであり、本作こそ彼がいわゆる「エッセイ漫画家」におさまる器ではないことの証左でもある。この漫画では誰もが同じぐらい間違っていて同じくらい正しい。

冴えない青年ふたりと女子高生、そして定年間近のおじさんの四人だけではじめた世直し活動はだんだんとその規模を拡げてゆく。関わる人の数も増え、街の自警団として勢力を拡大するにつれて、活動そのものの様相に変化が起きる。疑問を抱いた青年ふたりは活動から身を引くものの、目に余る自警団の狼藉ぶりにリベンジを誓う。そして、再起をかけた戦いがはじまる……!

というところでこの第一巻は終わっているのだが、実は、第二巻がこの先出ることはない。この青林工藝舎版の『生活』は、≪妻≫の妊娠の影響により中途で頓挫。のちに『モーニング』公式サイト上で連載再開し、最終的には講談社から「特装完全版」として再リリースされた。そのあたりの経緯に関しては『僕の小規模な生活』(講談社)でも多少触れられている。このような事情もあり、パッケージとしてはいささか分の悪い一冊ではあるものの、注目すべきことにこちらには福満氏のデビュー作である『娘味』が収録されている。本作は、人間を捕まえその肉を食べさせる猟奇的な母親の歪んだ愛情に立ち向かう子どもたちの姿を描いたショートストーリーだ。『まだ旅立ってもいないのに』などに収められた作品群に色濃く見受けられる神経症的なタッチと、カニバリスムをテーマとしたB級グロテスク映画的作風、そしてボーイ・ミーツ・ガール。『ガロ』に端を発する作者の初期作品のファンは見逃すことのできない一作。

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生活1 / 福満しげゆき
販売価格(税込): 1,050 円
A5判並製
発行日: 2008/01/31