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中野シズカ『星匠』

 描画のほとんどをスクリーントーンの重ね貼りで描いていくという独特の手法で知られる中野シズカの、目下最新の単行本。ミニマルな点描の連続でしかないスクリーントーンで描かれた画面というものは、ともすればAdobeのIllustratorで半ば機械的に描かれたような、のっぺりとした絵面になってしまいそうなものだけれど、トーンの使い分けや重ね貼りの妙によって、細かい陰影を見事に表現している。……いやー、手間とお金がかかりそうな制作スタイル! もちろん輪郭を出すために実線も多く用いられてはいるのですが、トーンのみの部分の、この独特のこころもとなさ。影になっている部分だけをトーンで着色して、白が残っている部分を逆に浮き上がらせてみたりですね。夏の宵の花火や、雪原の上へと零れる月明かりなど、光と影の描写がとても素敵です。

 不安な夜に子どもたちを導く星を操る『星匠』、期待に押し潰され創作に行き詰まった小説家の、一夏の終わりまでを綴った『一夏』、とある山の中の家屋を舞台に、住処を追われたタヌキと物の怪と人間たちが立ち回る『タヌキのお屋敷』、夏の日の移ろいやすい空模様を主軸に書生ふたりの一日を描き、敏感な観察眼が光る『通り雨』などなど、情緒的な短篇が並ぶ。デフォルメされた人間のタッチが少しオノ・ナツメに似ている(主に眼の描き方によるものだとは思うけれど)というのもあってか? なんとなく女性向けの漫画という印象はあるかもしれませんね。絵柄も可愛いので。

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星匠 ほしじょう / 中野シズカ
販売価格(税込): 1,470 円
A5判並製 176ページ
発行日: 2010/06/22