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甘茶茂・猫町にあ『モビールホーム』

 ひきこもりの女の子と、彼女を取り囲む三人の少女たちの、とりとめのないある一日をファンタジー形式で描いた小品。猫町にあによるファンシーな絵のタッチが、この作品の肝だ。装飾的で、ゴシックな雰囲気で、それゆえにすこし神経症的なものも感じさせるキャラクター造形は、少女という存在のある一面を多分に映し出すものである。と、ファンタジー=すべての創作物を通してしか殆ど少女というものを知らない僕は思う……。

 NECOfanマガジンに掲載された原作者・甘茶茂による解題を読むと、「映画『オズの魔法使(1939年公開)』のファンタジーの裏側にはふたつの現実が横たわっていて」、「それがショービジネスというもの」であり、「そう割り切ったうえで、じゃあぼくも自分の中のファンタジーを描こうと思い立った」とある。

 夢見がちで、ちょっとオタクっぽいところのある女の子四人組なんて、実際はけっこーエグい面もあると思うんですよね。まあ端的に言えば、そんな良いもんじゃないだろうということ。この作品では、そういうエグみはすべてシュガーコーティングされている。メインの引きこもりの女の子は、憂いや悩みがあって学校に行かないというわけでもないし、どんなハプニングが起きようが簡単に解決してしまう。つまり、「早いとこあの子をつかまえよう」と言われているように、とらえどころがない。そうした少女的な——あらゆる創作物が恣意的に描いてきた、幻想のようなものだ——奔放さを描いたといえばそれだけなのだが、先に触れたNECOfanマガジンにおいて語られていることを念頭に考えると、ファンタジーとは、そしてファンタジー産業とは何ぞやといったようなことに思い至るのである。

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NECOfan

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「モビールホーム」 / 甘茶茂・猫町にあ
販売価格(税込): 210 円
A5判 12ページ
発行日: 2013/08/18