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根本敬『怪人無礼講ララバイ』

 「怪人無礼講ララバイ」と検索すると【「怪人無礼講ララバイ」はお勧めですか?】と題のついた、Yahoo!知恵袋に寄せられた質問がヒットする。その質問内容にはタイトル以上のことが書き込まれておらず、質問者の言う「お勧めである」とはいったい何に依拠したものであるのか、何を期待したものであるのかといったことは、結局のところわからない。ある作品が「お勧め」であるか否かというのは、作品と受け手の相対的な距離に依るものでしかなく、何にもないところにただポンと飛び出して示したりできるようなものではない。はずではあるが。他の追随を許さない極北の表現であるという点で、『怪人無礼講ララバイ』はまずお勧めすることができる。ここに何かしらの良識への貢献や、教訓や、または滋養のようなものが描かれていなかったとしても、この作品が存在する理由はたしかに存在する。目を背けないだけの度量があれば、とりあえずは良い。そして次は、想いを馳せてみることだ。

 「特殊漫画家」を標榜する根本敬の、数々の作品のなかでも最高傑作と呼ばれる一冊。本書は1990年に青林堂から刊行されたものの新装版。ここに描かれているものは下ネタどころのものではない「よくもまあこんなにも」というほどにただただ下劣な世界。この漫画には、すべてのいかがわしいものとフリークスたちと虐げられた人々しか登場しない。この饒舌さと自然体な姿勢からは、良識への躊躇といったものがはじめから抜け落ちているとしか思えない。しかし、それゆえに、見栄や欲望といったものから完全に自由であるからして、ある意味では菩薩のような漫画であるようにも思う。潔いとかよくないとかそれ以前のレベルで、根本敬は生きている。それにしても、たとえば映画でこれだけのものを作ろうとしたら、どれだけの越えねばならない気苦労と手間隙と、そして規制が立ちはだかるだろうか。漫画という表現媒体がこの世界にあってよかった。

 解説は呉智英。

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怪人無礼講ララバイ/根本敬
販売価格(税込): 1,050 円
A5 判並製 189ページ
発行日: 1999/04/30

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