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あらいあき『ヒネヤ2の8』

夕暮れの風がほゝをなぜる いつもの店に行くのさ 仲のいゝ友達も少しは出来て そう捨てたもんじゃない

浅川マキ『少年』

前作『チュウチュウカナッコ』に続く、カナッコシリーズの第二弾。表紙が前作と同じ様に、カナエカナコが中心でポツネン~と佇むといったデザインですが、今作では彼女の周りを取り囲む人間の数がグンと増えているのが象徴的。内省的だった前作の前半部とは異なり、「騒音」「権力」「若者」「乱闘」といった、人々の「うねり」のようなものが、ここでは描かれています。モブシーンも多く、丁寧で細かい描き込みは圧倒されます。70年代が終わりに近づき、新しい時代が、新しい価値観が到来しつつある過渡期……それは、ある種の「いかがわしさ」の性質が変わろうとしている時代だったのかもしれません。それぞれが人生の分岐路に立ち、それぞれが大人になりつつある。家を出たり、聴く音楽が変わっていったりするなかで、人々はある時は訣別をしたり、ある時はやっぱり何も変わらなかったりする。ヒネヤ商店街はなにかと騒がしいけれど、カナコは相変わらずマイペースに生きています。

今作は、商店街での異臭騒ぎから始まります。仔細なこともわからないまま、立ち入り調査のために福々軒は営業停止。行政の不透明な動きに、住民たちの猜疑心は募る。商店街は、調査隊へのデモや抗議の路上演劇で騒々しくなります。やがて異臭の元が発覚し、カナコは住み慣れたアパートから立ち退くことを余儀なくされる。東日本大震災、福島第一原子力発電所事故を経て、反原発デモに参加するようになったと語る作者ですが、その経験は、今作に大きな影を落としているようです。「国や社会……時代にだってにおいがある」というセリフには、ある時代に存在する/存在したひとつのムードを描く漫画としての、矜持や宣言のようなものが見え隠れします。

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ヒネヤ2の8 / あらいあき
販売価格(税込): 945 円
B6判並製 217ページ
発行日: 2012/08/31