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あらいあき『チュウチュウカナッコ』

70年代の終わり頃、とある商店街の中華料理屋でアルバイトをするカナエカナコ(23)は、人見知りで内気でドン臭く、そのうえ貧乏な女の子。いつもお腹をすかせており、賄いのチャーハンをいつも半分持ち帰っては、晩ごはんにさらに半分食べ、さらにもう半分を朝ごはんとして食べている。ずっとひとりぼっちだったカナコは、出来る限り波風を立てないようにひっそりと生きることに努めていましたが、そんな彼女の姿に周囲の人間は不憫に思ったり、または面白がったりすることで、やがてみんなから愛されるようになります。……しかしそれだけでは腹は膨れない。カナコのひもじい日々は続きます。

「カナエです。カナエカナコです」と自己紹介をするときの、あまりにポツネン~とした佇まい、不安な表情。そこに彼女が抱えている、生きづらさゆえの
肩身の狭さが凝縮されています。悲しい目で周囲の大人たちを見上げる視線は捨てられた子犬ようで、読んでいるこちらも悲しくなってくるものでもあり、また、情が湧いてくるのです。そしてなにより、可笑しい。努力家で優しく正直で、不器用なカナコが巻き込まれる数々の事件に泣き笑いましょう。

福々軒のリーゼントの店主、ダイアルラジオ、のど自慢大会など、今は失われてしまったアイテムのひとつひとつが「バック・トゥ・昭和」なわけですが、ここにあるのは、たとえば映画『Always 三丁目の夕日』のような仰々しい昭和礼賛とはまた少し違った種類のノスタルジア。前衛演劇家やダークなロックバンドが登場するあたりに、かつて確かに存在したアンダーグラウンドな時代への憧憬が感じられます。

著者のあらいあきは、90年代初頭からマンガ・イラストレーションを手がけ、いくつかの作品を発表するのと並行して役者としても活動し、大人計画公演『ファンキー』(96年)、『ヘブンズサイン』(98年)、井口昇監督映画『クルシメさん』(97年)、『恋する幼虫』(03年)などの主演作があります。本作は忙しい生活の間をぬって、のべ10年近くかけて描かれたもの。あとがきによると、中華料理屋でアルバイトをしていた経験から、当初は自らをカナコに投影していた部分があったものの、5年のブランクを経て執筆を再開した際には、「いい感じで距離が取れるように」なっていたとのこと。たしかに、中断後の6話目以降から新しい仲間が登場し、内省的な作風から賑やかな作風へとシフトしていきます。

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チュウチュウカナッコ / あらいあき
販売価格(税込): 1,050 円
B6判並製 193ページ
発行日: 2010/08/30