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駕籠真太郎『登校途中の出会い頭の偶然キスはありうるか?実験』

 80年代から活動し、海外でも根強い人気を誇る駕籠真太郎の短篇作品集。奇想漫画家を自称し、その作風はエログロで露悪的。音楽でいったらジョン・ゾーンみたいな……『Naked City』のインナースリーブが体現するような、まさに60年代の日本映画やB級芸能、見世物小屋、演劇・舞踏といったジャパンアンダーグラウンドの血統。それは澁澤龍彦にしろ大野一雄にしろ伊藤潤二にしろ、インパクトがあるということとともに、美意識が何よりも重要な世界だと思う。一枚一枚の絵のデザイン性が高く、グロテスクなのにも関わらず、つい見入ってしまう魅力があります。

 それぞれの作品に登場する人物の名前が芸能人(たとえば、綾瀬はるか)や『花より団子』や『まどかマギカ』といったヒット作品から海賊的にそのまま借用されているあたりに、世の中に対する穿った見方というか、意地悪さのようなものが感じられたりする(そもそも、これだけ暴力的な作風だったらそりゃ当然というものだ)。そしてそれは『VICE』上で連載されていたという時事ネタ1ページ漫画などにも多分に表れている。

 いくつかの作品では、漫画的約束事に対するメタ実験が繰り広げられている。「マンガの原稿用紙の裏側から描いているマンガ家を見上げている構図」から描かれた漫画、すべてコマの「外側」で進行する漫画、セリフが反転した漫画、タイトルにもなった「登校途中の出会い頭の偶然キスはありえるか?」を検証する人々を描いた漫画、などなど……。それはただ単純にスキャンダラスであったりショッキングであるということとは異なった、理知的で本質的な攻撃性だ。これらの挑戦的な漫画を読んで、久しぶりに脳の神経がビリビリいうのを感じた。

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登校途中の出会い頭の偶然キスはありうるか?実験 / 駕籠真太郎
販売価格(税込): 1,155 円
A5判並製 164ページ
発行日: 2012/04/30