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藤枝奈己絵『愛しの青春きのこ』

「何故私は男として生きて闘わなくてはいけないのだ。
私は普通の女として恋もして生きていきたい」
「宿命萌え~!!!の名場面!!!」

『青春きのこ』より

『変わってるから困ってる』『夢色お兄ちゃん』(共に青林工藝舎)といった作品を発表してきた藤枝奈己絵の短編集。表紙に記されているように「間違えているかもしれませんが!!! 私なりの萌えマンガ」である本作には、自らの宿命に苦悶するオスカル風ヒーロー(男のような凛々しい喋り方をする美しい女性)であったり、伝統ある女学園に入学したばかりの少女とお姉様たち(呼び止められ制服の身だしなみを正されるところから物語がはじまる)といった、萌えの定番中の定番というべきキャラクターたちが登場します。様式美ともいえるお決まりのシーンをひとつひとつ押さえつつ、ギャグ要素が大きく注入されることで、逆に浮かび上がってくる萌え要素に必然的にツッコミを入れていくのが、本作の読み方のひとつなのかな。ツッコミというか、「そうそうそうなのよ」と確認していく感じに近いだろうか。いわゆるあるあるネタというものです。なのでここで言う「萌えマンガ」というのは、「わたしたちが萌えるマンガ」というより、「わたしたちが普段思う萌えについて描かれたマンガ」に近いのかもしれません。

一方で、『貴方に届け!!』と題された短篇では、気になる女子をどうしても落ち込ませたいがために四苦八苦する女子の姿が描かれています。嫌がらせを繰り返す少女と、傍若無人の佇まいを保ち続ける少女、そして道化役として二人をかき回す謎の少女。これは、いわゆる「直球の少女漫画」(それこそ、椎名軽穂『君に届け』(集英社)のような)をネガのように裏返した漫画なのだろうか? 捻くれた人間が捻くれたままに疾走し、現実に打ちのめされる。そんな独りよがりの愛情は、ある意味ではまっとうな恋であると言えるだろうし、ドラマチックな少女漫画よりも正直だ。失恋して得るものなんかあってたまるかということです。

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赤子よ日記

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「愛しの青春きのこ」 / 藤枝奈己絵
販売価格(税込): 400 円
A5判 52ページ
発行日: 2013/07