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作: 古川日出男 絵: 後藤友香『コレクションさん』

ぎゅううん……。
ぎゅいいぃぃん……。
ぎゅう。ぎゅう。ぎゅう!
すてきな音色です。
宇宙のギターです。
この宇宙でいちばんすごいギターです。

(本文より。)

去年の秋に、山本精一が「できうる限りの音量でノイズをやる」ということで「1週間くらい聴覚に支障来すかもしれない」と言いながら始めたライブ、最終的には「アンプ燃えちゃってもう演れない」とのことでオッサンが鮨詰めになった小さな会場を焦げた臭いでいっぱいにしながら30分程で終了したらしい。あれは本当に凄い体験だったと、実際に観た人間は言っていた。

小説家・古川日出男と漫画家・後藤友香の合作絵本『コレクションさん』。学校の帰り道、「べつの町」へと出掛けた男の子は異空間へと迷い込み、そこでギターを弾くお兄さんから99個の「ぜつぼう」を集めるよう指令を受け、小さな冒険を始める。ここでは、日常と非日常は地続きになっている。歪な世界に迷い込むきっかけというものは、そんなにたいしたものではない。サイケ、は常にそういうところに存在する。

しかし、少年が遭遇した、フィードバックノイズの渦……!! ターンオンしてチューンインしてゆく心象風景を、後藤友香による殴り塗られたような極彩の色の嵐が、鮮烈に描き出す。山本精一のギターが発した音は、こんな色をしていただろうか。凄まじい体験は、あっという間に人を彼岸へと連れて行ってしまうのだ。絵本なので、児童向けの体裁が取られている。知育本だ。一方でこれは、18禁に指定されるべき書籍でもある。一般的な尺度でいえば、あまりに知覚を拡張し過ぎるのは、よくないということになっているからだ。そう誰もが彼岸に行かれては困る。しかし、個人的には、一般的によくないとされていることが存在することは、とても良いことだと思う。99個の「ぜつぼう」の前で、フリーク・アウトした少年はひとつひとつに優しい涙を流す。本当の意味で“感受性がある”ということは、そういうことである。

翻訳家の柴田元幸は「これは元気の充電器みたいな本です。」と、コメントを寄せている。電流が流れている、とは思う。

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コレクションさん / 作・古川日出男 絵・後藤友香
販売価格(税込): 1,680 円
A5判上製 オールカラー48ページ
発行日: 2013/06/25