やっぱり心の旅だよ

福満しげゆき『やっぱり心の旅だよ』

「…例えば……週間連載をするような…なんというかちゃんとしたマンガ家になるのはムリだった…な…」「やはりエロマンガだと思うんだよ」

福満しげゆき『僕の小規模な失敗』より

大きな挫折のあと、生活の再起を誓うために2004年以降ふたたび描かれはじめた漫画がここには数多く収録されています。それらのほとんどはすでに廃刊となっているコンビニ雑誌のために描かれた漫画で、「このあとに載ってるエロマンガは「一切の自我を出さずに相手の欲望に徹する」と…心がけて描いたものです。こうして人は大人になっていくのです」と当時のことを振り返っていますが、そうした職業的な決心と同時に、「たとえエロマンガでも、ちょいと個性を出したい」といったような作家としての欲目が拮抗することで、ある場合には投げやりな態度で、ある場合には怒りを込めて、ある場合には旺盛なサービス精神を振る舞うことによって、作者のキャリアのなかでも最も分裂的で、躁的な作品を生み出したとも言えるでしょう。

社会的成功者への怨嗟、ヤンキーへの呪詛、若年世代の富を食い尽くす年長者への嫌悪、そして復讐……持たざるもの、傷ついた人間こそが報われるべきであるという非常にわかりやすい勧善懲悪的観念が、ここではボロ儲けをするだとか、美女による見返りを求めない無償の施しを得るだとか、“ただただうまい思いをする”という形で結実。初期の繊細な側面は後退し、それぞれの作品に独特のテンションの高さが見受けられます。ご都合主義的で、精巧でないがゆえに、大胆で、跳躍力がある。現実において踏み潰され続けた結果爆発した“都合の良いことだけをひたすら考えていたい”という妄想が、これほどまで直接的に発露した漫画はさすがにあまりないのではないか? とはいっても、青年が涙を流して女性たちへ感謝をしつつ、「すみません」と言いながら射精するあたりに、作者ならではのナイーブさが感じられ、また可笑しくもあります。

ま、それらのことは差し置いても、福満しげゆきさんの描く女の子には不思議な魅力があります。シンプルなようでいて、やっぱり絵が上手いということなのでしょうね。リビドーを抱えてきた男性ほど“刺さる”かと思います。

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やっぱり心の旅だよ / 福満しげゆき
販売価格(税込): 1,050 円
A5判並製
発行日: 2007/01/31