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甘茶茂『河岸段丘』

毎朝毎朝、新聞配達のアルバイトにいそしむ少年。その配達先のひとつ、川辺に立つアパートの三三五号室には、新聞を入れた途端に引き抜く謎の住人が住んでいた。少年はその存在を不思議に感じていたが、ある日偶然にもその秘密が明らかになる……。

あの感じはどこからかやってきて、そしていつの間にか消えていってしまう。太陽が昇ったばかりの、伽藍とした時間。息を吸い込むと冷えたての空気はまだ新鮮で、光の色は何故だかいつもと違って見える。淡白なタッチで描かれた本作には、そんな朝明けどきがコンパイルされています。少年は憧れのギターを買う為に、河岸段丘の街を自転車で走る。健全な風が吹いていますね。すぐ辞めるつもりだったのに、アルバイト先に馴染みかけてしまっているのを「しくじった」と思っているところがいいです。少年はその言動にどこか子供らしいところが残っていて、深い悩みに苛まれたことはきっとまだなさそう。ゆえにこの作品を恋の予感のするボーイミーツガールといえば、それは大袈裟というもの。胃腸に優しい一作です。

『線と情事』を発行するNECOfan主宰、甘茶茂の漫画処女作である本作は、筆者の出身地である仙台の住宅街をイメージしているとのこと。ノスタルジアは大いにあるといっても、それは郷愁や哀愁ではなく、よりフラットな懐かしさからくるもの。爽やかで柔らかで、夏が待ち遠しくなります。

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「河岸段丘」 / 甘茶茂
販売価格(税込): 210円
A5判 24ページ
発行日: 2012/02/05