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堀道広『耳かき仕事人サミュエル』

“賢明なる読者の皆様ならご存知かと思うが、人間の耳には足裏、手に匹敵する多くのツボが存在する。しかしその奥、耳の穴の奥には人間の生命の根源に関わるようなツボが存在することは一般的にはあまり知られていない。ごくごく稀にだが、耳奥の生命に関わるツボを刺激し死に至らしめる技術を持つ暗殺集団が存在する–”

ティアドロップのサングラスをかけ、パーカーのフードを頭にかぶった男、サミュエルは耳かき業界ではその名を知らないものはないほどの名手。彼が所有する「梵天」と呼ばれる白いフサフサのついた耳かきで耳をかかれた者は、とてつもない快楽とともに健康と治癒力(耳の聴こえない少女が聴覚を取り戻すレベルで)を得ることができる。一方、「スカル」の耳かき(髑髏がついてる)で耳をかかれたものは、やはり快楽を得るとともに、死亡するという……。サミュエルが所属する「日本耳かきアサシン協会」は基本、依頼人からの復讐や仕置きを中心とした“義”に基づいた活動を行っている。そして彼らは、日に日にその勢力を拡大させる犯罪集団「黒い綿棒」(殺人でNPO法人設立をめざす)と対決することとなる……という筋書きの「世界初デス耳かき漫画」です。

主にサミュエルが身につけているレイバンのサングラス(マッカーサー元帥がかけてるもの)のせいだと思いますが、いなたい空気感が昭和の映画のような雰囲気(舞台は現代)を感じさせてくれます。この妙にシリアスなムードと、それと相反したしょうもないストーリー、そして大胆な筆致こそがこの漫画の魅力。まず、絵がすごいです。ヘタウマと評されることもあるようですが、そんなヌルいもんじゃないでしょう。クレヨンで塗ったような重い塗りやカケアミはドスがきいています。どのシーンもすごいですが、身体が自分の耳のなかへと吸い込まれてゆくシーンは、1ページを細かく割っていくことで時間がジリジリと流れていくような、胃に鉛が落ちるみたいにヘヴィサイケなシーンで、非常に見応えがあります。そして絵と同じくらい、細かい笑いがすごいです。上手く言えませんが、“ツッコミの入らない笑い”が好きな人が好きなタイプの、シュールな笑いと言えるでしょうか。「郷火 ろみ」(顔はみのもんたに似ている)や「タモソ」といったキャラクターにも注目です。

ちなみに、ピエール瀧(電気グルーヴ・『あまちゃん』東京編でも寿司屋の大将として活躍中)が帯文を寄せています。

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耳かき仕事人 サミュエル / 堀道広
販売価格(税込): 945 円
B6判並製 195ページ
発行日: 2011/09/30