うるし

堀道広『青春うるはし!うるし部』

“一見、何の変てつもない真塗りの黒い漆椀……。だがそこには不思議と大消費時代の俺たちが忘れていたぬくもりとやさしさ、変わらない何かがある。熱いみそ汁を入れても熱くないぜ。扱いも少しは気を使うかもしれない。だけど昔っから日本人の中にある、ものを大切に使うってことを俺たちに教えてくれるんだ。”

天涯孤独の不良少女、金輪寺なつみはある日突然、日本随一の大富豪の一人娘であることが発覚する。初めて自由を手にしたなつみは、“奥能登地方に伝わる合鹿椀みたいな生命力のある椀”作りたいと語り、○×県にある尻毛高校のうるし部へと編入する。そこで彼女は『ゲームセンターあらし』の石野あらしの“うるし”版ともいうべき男、漆原塗平をはじめとする仲間たちに出会い漆芸技術について学んでいく。

表紙の印象と、うるし部なんていう主題を鑑みると、たとえば最近(というほどでもないが)の有名な漫画で例を挙げると、うすた京介の『すごいよ!!マサルさん』のセクシーコマンドー部や、同じく『ピューと吹く!ジャガー』のふえ科のような、まったく実体のない部活動を舞台とした、緩いギャグ漫画なのかと思われてしまいます。ところが、この作品では“かなり”本格的な漆塗についての解説がなされています。漆塗について学べる漫画として普通に読めてしまう点で、輪島漆芸技術研究所出身、実際に漆職人として働いていた作者ならではの、実に特殊な漫画と言えるでしょう。

とはいっても、ギャグ漫画としてやはりすさまじいです。これも堀さんのこの他の作品と同じく、説明できない、してはいけないタイプの笑いなのですが、そういったものを紹介しなければならないのは非常にもどかしいものがありますね。多くの事象が書き込まれている分、情報量が多いし、次々と意識の対象が移り変わってゆくので、笑いの方向が前方向に広がっているんです。そして、絵のパワーがすごい。首から上と下のバランスがどんどんすごいことになっている……。

あまりのエネルギーに“すごい”を書き連ねてしまいましたが、よっぽど“すごい”と言いたくなる作品なのだと僕は思います。シュールなお話がほとんどですが、物語としてもオチがついています。

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堀道広歳時記

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青春うるはし! うるし部 / 堀道広
販売価格(税込): 1,155 円
A5判並製 212ページ
発行日: 2007/03/31