B3471-00

川崎タカオ『待ちぼうけ紳士』

スージー甘金主宰のコガネ虫スタジオ出身、フリーのイラストレーターとして活躍する川崎タカオの漫画作品。ダンディな中年、ただの中年、宇宙人、動物など、作者の描くヘンテコな生き物の数々なかでも、独特の愛嬌を持ったキャラクター「待ちぼうけ紳士」を主人公に据えた作品集です。

彼はいつだって誰かを待っている。待ち合わせの相手が姿を見せることはない。それでも彼は、いつまでもいつまでも待ち続ける。そして彼は待ち続ける間、様々な人間に出会い、それぞれが背負ってきたとも言うべき人生のドラマを目の当たりにする。「待たされているのではない、待っているのだ」という言葉は、彼の信念であり、哲学でもあり、願いでもあります。「待つ」ということはこれからの未来に期待を込めるということであり、能動的な行為であるからです。気休めにしか過ぎないとしても、あえてその道を選びとろうとする彼の姿にはある種の哀愁が漂います……。

作者あとがきにあるように、この作品描き続けるにあたって「待つ」ということについて改めて向き合い、考えざるをえなくなったことで、「間抜けさを内包した悲しさ」を「待つ」という行為から見いだしたといいます。悲しさを抱えた笑いは言うなればブルース。それはすなわち人生そのもの。夜になり、辺りに人影もなくなった街角で彼は腰を下ろし、時間の経過をじっくりと想う。話数を重ねるごとにそうした侘しい時間が多くなり、当初は、単なるシュールなギャグ漫画として始まったこの作品は、だんだんとシリアスな様相を帯び始め、最後にはまさかのメロドラマティックな結末を迎えます。

表紙やタイトルの印象とは異なり、想像以上に重たい作品だったのでいささか驚いたのですが、もちろんギャグ漫画としても面白いです。オフビートな笑いを好む方は是非。

Buy Now

待ちぼうけ紳士 / 川崎タカオ
販売価格(税込): 1,155 円
A5判並製 186ページ
発行日: 2011/08/30