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オダシダミチカ『旅のしおり Vol.1』

巻頭に引用された松本伊代『センチメンタルジャーニー』。作品集のオープニングテーマとして、この短くも印象的なフレーズをしっかりと噛みしめたくなる。続いて現れるのは、Anthrax『Antisocial』を流しながら夜の高速道路を走るライダースジャケットの男。これから何かが起こるのか、それとも何も起こらないのか。映画だったらここの場面でタイトルバックが流れるのだろう。

関西を中心に活動する、西田かん(シナリオ)と津高ツル(作画)の両名による漫画ユニット「オダシダミチカ」による作品集。そのタイトルのとおり、旅にまつわる漫画と文章(と、『散歩道』と題された漫画一本)が収録されています。

この表紙の桃色の紙……学校で貰った修学旅行のしおりもこんな感じの紙で綴じられてましたよね。描かれているのは観光地を背景に撮ったクラスの集合写真。修学旅行のしおりというものは、旅行の前や最中に読むものです。集合写真=旅の想い出を表紙に冠したこの冊子に収められているいくつかのエピソードは、これからの旅にまつわる物語ではなく、これまでの旅にまつわる記憶の物語であると読みとることもできるかもしれません。どこか懐かしいような空気感が、どの作品にも通底しているように思います。

警察から逃げるメタラーの男と托鉢僧のロードムービー……というほどではなく、旅から脱線したところで物語は進みます。このお話には“確固たるもの”は登場しません。どこかうさんくさく、いかんともしがたいような人間たち。時には酔ったり、醒めたりしながらも、二人は旅を続けます。はたしてこのお話はまだ続きが描かれるのでしょうか? 冒頭でも少し触れましたが、絵と物語の関係性が映画的で、丁寧に描かれた漫画であると感じました。

そして、『散歩道』。物語内の時間の流れ方、画面構図の緩急、独白などなど、大橋裕之『シティライツ』のあの感じが好きな方にはかならず、ピンとくるものがあるのではないでしょうか。

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オダシダミチカ

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「旅のしおり Vol.1」 / オダシダミチカ(西高アン, 津高ツル )
販売価格(税込): 525 円
A5判 64ページ
発行日: 2012/10/14