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ウチヤマユージ『LOVER SOUL』

「整理された心を持つ者にとって、死とは次の大いなる旅の始まりにすぎない」と『ハリー・ポッター』のダンブルドア先生は数奇な運命を負った教え子に向かって説いていた。それは慰藉の言葉である一方で、人間は死ぬまでの長い時間をかけて自分の人生を、そして自らの死を整理しなければならないということだ。ときに、この超高齢社会において、または衰退が目に見えている国家の一員として、ただ無為に生き続けていくことはもはや困難なのではないか? と感じると告白したらどのように受け取られるだろう。

たとえば、歩行できなくなったり、モノが考えられなくなってもなお、生きていることは生物として不自然ではないか。「死ぬ理由」を挙げようと思えばいくらでも思いつくだろう。「生き続けることに失望」とか、「ぼんやりとした不安」とか。そんな悲観的でない場合でも、どうやって死ぬかはやはりみんなが考えている。最近では「終活」—人間が人生の最期を迎えるにあたって行うべきこと—と称して”エンディングノート”だのなんだのがにわかに盛り上がっている。その人にとっての人生の最期はたった一度きりしかないのだから、いろんな意味で、失敗しない死に方を選びたいのは当たり前のことだ。

入滅し即身仏になることを選んだ修行僧と、彼を愛した女を描いたこの短篇には、現在、一般的とされている倫理観からすると、キワどそうなフレーズがいくつかある。女は、「自殺にはどんなイメージがありますか?」と問いかけたのちに、「何か白くて清い光を目指しているような」と形容し自答している。それはあくまで見解のひとつであって、ここで大事なのは、死生観を捉え直そうという姿勢の方だ。他人がどのように自分の人生に折り合いをつけようとしているのか、口を挟むのは野暮であり、個々の事情を顧みない常識や法規で制限しようとすることは無粋である。そして、それは決意した人間の傍で支えることを決意した人間についても同じことが言える。結末の部分で、彼女がクレイジーめいているのも、おかしなことではないな。サラッとしているのに、壮絶な作品。

(方便凌)

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「LOVER SOUL」 / ウチヤマユージ
販売価格(税込): 500 円
A5判 48ページ
発行日: 2014/05/05