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西倉新久 (シンク)『オリビアとトルーデの日記』

女子の、建前と本音みたいな、二つの顔を隠し持っているところ、恐ろしいですよねー。僕、たぶん女子のナワバリ意識みたいなのがいちばん激しい中学生の頃、二つの顔があらわれるところを目の前で見たことがあります。クラスでは中心の方にいる子と、どちらかというと周縁にいる子。もちろんグループは別々。ある日、ふたりが教室の入口でにこやかに帰りの挨拶をしてたかと思いきや、中心派の子がその場から離れた途端、もうほんの一瞬! 周縁派の子がクルッと踵を返して「死ねッ」と言った! 僕はそれをたったの二、三歩下がった場所で見ていた(近い)。別に面白い話ではないけど、人が手のひらを返す瞬間(しかもこんなに明快に)なんて実際そう見れるものでもないでしょう? だからよく覚えてる。この短篇はそういう建前と本音をちゃぶ台返ししちゃう女の子が登場します。

オリビアとトルーデの日記。タイトルとバロック調な表紙絵からは英文学の古典めいた絢爛な物語を想像させられるが、中身は日本の普通の女子高生が生活するに相応しい世界に見える(キャラクターの名前や校舎などは外国のものだが)。しかし、この作品の舞台となる女子校では、家の財力や学力によって、確固としたクラス(学級という意味でのクラスと、階級という意味でのクラス!)分けがなされている。たしかに社会というのはそういうものだ。主人公のひとり、トルーデは金持ちの集まるAクラスの生徒ではあるものの、同級生たちの高慢で他のクラスを見下した態度に違和感がある。そんなある日、彼女は大事なノートを落としてしまう。なんとそれは実はクラスメイトの悪口を綴った日記帳(どうして日記帳なんか学校に持って来るんだッ!)だった。そんなものを書いていることが他人にバレたら非常にマズイ、と南無三、駆けていったところ、日記帳を拾っていたのがCクラスの生徒であり、もうひとりの主人公であるオリビアだった。トルーデにとっては口封じのため、オリビアにとってはAクラスに知り合いがいればステータスになるため、利害の一致したふたりは「友達」になることに……。

当然、物語は続く。あらすじを書き連ねるとネタバレになってしまうから、これぐらいに。僕が感じたこととしては、トルーデは、高慢なクラスメイトの態度に疑問を抱くぶん、彼女自身もクラスメイトのことを見下していたりする。他人を認めない態度というべきか。それでも学校という社会で生きていくために、建前と本音を作らなければいけなくなってしまう。それでも、そんな面倒ごともすべて無関係のところで「もしかしたらわかりあえるかも?」と感じるときは誰でもワクワクする。この作品で一番良かったのは、トルーデがオリビアに好きな音楽を聴くシーンだと思う。

(方便凌)

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「オリビアとトルーデの日記」 / ABXXX
販売価格(税込): 432 円
A5判 50ページ
発行日: 2014/05/05