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Interview 窓ハルカ 2

『週刊少年チャンピオン』2011年44号掲載『鈴木華子ちゃんの戦慄』にて商業誌デビュー。2014年02月のコミティア107にて同人誌『名も無き一夜のファンタジー』を発表し、各方面から絶賛されているマンガ家・窓ハルカさん。2014年04月17日に4コマ『土鶸井先輩保護クラブ』がアニメ化されたことを記念に、甘茶茂がインタビューを敢行。

独特の「疾走感」と「逸脱感」、「性」や「知的障害」といったタブーと向き合いながらも笑いに昇華させる希有なセンス、そしてぶっとんだ世界の根底にながれる「切なさ」。これらがごった煮となった、窓ハルカワールドのひみつに迫る。

インタビュー: 甘茶茂

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甘茶
そうそう、その「友だちがいない」話を聞いて、高校時代にマーガレットに投稿したという『孤独のいたづら』を思い出したんですが、これ実体験にもとづいていたんですね。
そうなんです。そういえば当時、国語の先生に「お前は『山月記』の李徴に似ている」と言われたことを覚えています。李徴も自分の世界に閉じこもって小説を書いているうちに、自意識だけが肥大化して、虎になったわけじゃないですか。言われてすごくシンパシーを抱きました。
甘茶
そんな状況、家族は知っていたんですか?
親には全部言ってました。そしたら、泣かれました。家の中では明るかったんですけどね。さんざんたしなめられたり、怒られたり、慰められたりしたんですけど、私は頑固だったので。
甘茶
やっぱり「いつか小説家かマンガ家になろう」という夢がよりどころだったんですかね?
そうですね。ただ、当時は必ずしも小説やマンガじゃなくてもよかったので。お笑い芸人を目指したり、ファッションデザイナーを目指したり、女優を目指したり、「何者か」になれればなんでもよかったんです。だからそれぞれ動機は単純で、M-1を見て「お笑いって面白いな」って思ったのがきっかけですし。ファッション雑誌の『装苑』は賞に入るとデザインを実際に服にしてもらえるんですよ。それが目的でした。
甘茶
あと、女優っていうのもすごいですね。演技経験あったんですか?
いえ、ありません。実は、『線と情事』第二号の表紙の夏蓮さんが主演した映画『埋もれ木』のオーディション、私も応募したんですよ。もちろん書類選考で落ちましたけど。ただ、秋田じゃ上映されないので、完成した映画を見る手段すらなかったです。だから夏蓮さんの顔初めて見ました。黒歴史なんですけど、それくらいもがいていたんだと思います。

あとは弟の存在が心の支えでした。いつも一緒に遊んでいました。弟は知的障害があるんですが、可愛くて面白くてすごく大好きで、今は離れて暮らしているのでお互い寂しいです。

甘茶
後の『名も無き一夜のファンタジー』で描かれる姉弟の愛情のほとばしりは、実体験に基づくものだったんですね!窓さんのマンガの根底に流れるペーソス、切なさ、さみしさのひみつが少しわかった気がします。

さて、高校時代、マンガは投稿もされた『マーガレット』中心ですか?

『りぼん』の『ちびまる子ちゃん』や岡田あーみん先生はよく読んでいました。
あとは、『流行通信』や『イラストレーション』を読んでいると自然と「つげ義春」の名前が出てくるじゃないですか。まだネットもやっていなかったので、そうしたかすかな情報を頼りにガロ系にたどりつきました。
甘茶
雑誌だけは全国平等ですもんね。高校を卒業してからは?
美術の短大に進学しました。通学圏内で自分の学力・成績で行けるようなところ、ということで。受験科目に数学がなかったし、美術って自由そうじゃないですか。
甘茶
一番気になるところですが、その短大では友だちはできたんでしょうか?
できました!実は入学にあたって、ネットで「友だちのつくりかた」みたいなノウハウを調べたんです。たとえば、笑顔が大切とか、相づちを打つとか、とにかく質問をするとか。
甘茶
いわゆる「大学デビュー」ですかね。
はい、友だちって大切だなとしみじみ思いました。
甘茶
じゃあ、友だちもできたし、マンガにも本格的に打ち込めました?
いえ、短大時代はマンガは一切描いてないですね。美術の学校ということもあって、課題をこなすばっかりで、創作意欲が湧かなかったんでしょう。マンガは『NANA』と『ハレグゥ』しか読んでいません。あとは時々小説読んでいたくらいです。
甘茶
そうなんですね。逆に課題以外には、何をしていたんですか?
短編映画を撮ったり、お笑いのライヴを見に行ったりしていました。無名なんですけど「素敵なサムスィング」という事務所のライブが好きで、月一ペースで東京に行ってました。大学でできた友だちといっしょに。

3へ続く

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「名も無き一夜のファンタジー」 / 窓ハルカ
販売価格(税込): 864 円
A5判 114ページ
発行日: 2014/02/02