日本の実話

河井克夫『日本の実話』

ここに収録されている作品は、雑誌『マガジン・ウォー』に連載されたものから抜粋されたものだ。『マガジン・ウォー』、知っていますか? マガジン・マガジン社(『クロスワード・メイト』なども刊行 / のちにサン出版社と統合?)からかつて刊行されていた月刊誌で、廃刊後は『マガジン・ウォー・狼(ウルフ)』や『マガジン・ウォーJK』などが後継として続き、現在は『ウォーA組』が刊行されている。これらの書籍は、コンビニの雑誌コーナーの端の方で申し訳なさ気に、しかし大胆に陳列されている。はて? つまり一言でいえば、いわゆるエロ雑誌である。本作は、まことしやかにささやかれるいかがわしい体験談をもとに描かれた実録漫画である。

エロ媒体というものは当然エロ用途に消費されるために存在しているので、あくまでメインはエロコンテンツであるが、エロ以外の記事や漫画がツマとして掲載されているのを見かけたことがある人もいるのではないだろうか。特に、実録体験談みたいな記事、よくありますよね?(このブログを訪れる貴兄たちはみなサブカルエリートばかりであられると思うので、下賤なエロ雑誌などは手に取られないであろうから、もしかするとご存じないかもしれないが)しかし、初期の福満しげゆき作品の多くもそうであったように、存在自体が不安定なコンビニ本の中の、これまた輪をかけて存在が不安定な枠であるからこそ、多少のエロ要素さえ含んであればOKの「なんでもアリ」の世界が展開されていることは往々にしてある。ゆえに、本作のようにエロ雑誌掲載の漫画がジャパニーズアンダーグラウンドの総本山・青林工藝舎から刊行されていることも、そう不思議なことではない。

さて、本作巻末には評論家の呉智英が解説文を寄稿している。氏が指摘するように、河井克夫の写実的な絵柄はエロ漫画としてはあまりに非実用的で、そしてそれがゆえに唯一無二の空気を醸し出している。ひとつひとつのエピソードの信憑性は問題ではない。「日本の実話」というスキャンダラスな(というより三面記事的な)タイトルはいかにも胡散臭く、タブロイドに群がる人間たちの欲望を具像化しているようで、この一冊を取り巻くムードこそが現代日本の姿そのものと言えるだろう。
(方便凌)

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日本の実話 / 河井克夫
販売価格(税込): 1,575 円
A5判並製
発行日: 2004/12/31