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ザワ・フリークビート、G釣墨州『ランチタイム』

学生と社会人では「昼休み」のとらえ方が異なるかもしれません。学生にとってはあくまでも学校というコミュニティの延長線上にあるのに対し、社会人にとっては会社というコミュニティからいくぶん拡張されたものだからです。

したがって、社会人にとっては、昼休みにいかに会社から逸脱するかが重要なテーマになりえます。なお私、甘茶茂はサラリーマン時代、「後楽園遊園地の絶叫マシーンに乗る」「お茶の水の楽器街でエフェクターを漁る」といった試みを意識的に行っていました。

さて、この同人誌は、「Private World」シリーズでおなじみのザワ・フリークビート氏と、サークル「TUNEBiT」のG釣墨州氏の、いわゆるスプリットシングル的な一冊で、『ランチタイム』というタイトル通り、社会人・学生それぞれの昼休みが描かれています。

2作品とも共通するのは、逸脱できなかったものだからこそ抱く逸脱への幻想。裏テーマが「三白眼女子」とのことですが、現実にはまず存在しない典型的な才色兼備の女性というアイコンを通したファンタジーが、よりいっそう喪失感を増幅させます。

学校には嵐からの隠れ場所はなく、社会人になってもさまざまなしがらみから逃れられない。それでも、ファンタジーという最終兵器はポケットにしのばせておきたい、そんな欲望に忠実な作品ですから、ストレス社会の処方箋としては最適ではないでしょうか。

一方、居場所づくりに長けた人や、自由に生きている人にとっては、「一体みんな誰と戦っているんだ(AA略)」という言葉よろしく、ピンとこない部分があるかもしれません。だからこそ、ドンピシャな人にとっては「三白眼女子」たちがミューズなりえるのです。

それも、コミュニティの内側にいた彼女たちが「逸脱」の中で、自分だけに「真の姿」を開示してくれるのですから、それを独り占めするという思春期特有の未成熟さが、2作共通して愛おしくもあります。

逆に言えば、この作品こそが、ザワ氏・G釣氏両者が、ふと休憩時間に油断して見せてしまった「真の姿」なのではないでしょうか。そういう意味では、このスプリットシングルが両氏の真骨頂ではないからこそ、自然体の彼らを独り占めできる、ファンにはたまらないアイテムと言えるでしょう。

(甘茶茂)

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Lostwomen
TUNEBiT

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「ランチタイム」 / ザワ・フリークビート、G釣墨州
販売価格(税込): 210 円
A5判 28ページ
発行日: 2014/02/02