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窓ハルカ『名も無き一夜のファンタジー』

山野一の『どぶさらい劇場』や『混沌大陸パンゲア』の読後感のようなカタルシスに包まれ、適切な言葉が見つけられずに、ただ「面白い」としか言えなくなりました。諸手を挙げて絶賛するしかない傑作です。

一つひとつが短編として秀逸で、かつトータルで大きなうねりをみせる群像劇が、リビドーでもなんでもない「性」そのものへの嫌悪感・禁忌感をテーマにどこまでも突っ走る展開は、「ブラックユーモア」という陳腐な言葉で片付けられない、人間への徹底した不信感と、一方で、偏った愛情にあふれているあやういバランス感覚で成立しているように思えます。

それでいて、コアなマンガ好きでなくても、「何これ」と手に取った普段熱心にマンガ読まないような人が、「面白いじゃん」と最後まで読み切ってしまうようなポピュラリティまで備えているという恐ろしさ。それは窓ハルカ氏が週刊少年チャンピオンにて『鈴木華子ちゃん』シリーズを連載していたことからもわかるでしょう。

キャラクターが生きているので、読み進めるにつれ、全員が(女性はかわいく、男性はかっこよく)愛おしくなってくるというマンガの技術も見逃せません(映画『アバター』で最初は異形にしか思えなかった女原住民が美しく思えてくる感覚に似ています)。

兄妹ものであり、シスターものであり、知的障がい者ものであり、メイドものであり、王族ものであり、NTRものであり、孤児ものであり、復讐ものであり、サーカスものであり、ツンデレ恋愛ものであり、スイーツ(笑)脳ものであり、ファシズムものであり、新興宗教ものでありながら、決して詰め込みすぎではなくすべて咀嚼しきっている奇跡的112ページです。

(甘茶茂)

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「名も無き一夜のファンタジー」 / 窓ハルカ
販売価格(税込): 840 円
A5判 114ページ
発行日: 2014/02/02