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西倉新久 (シンク)『espcomplex2』

西倉新久(シンク)さんは職人的な作家という印象があります。というのも、どんな題材であっても、巧みに調理し、エンターテインメントとして仕立てあげる手腕があるからです。

実際、短編集『ABMIX』だけ見ても、「音楽」×「人間とロボット」、「親友」×「都会と田舎」、「ゲーム」×「リア充とオタク」、「雅楽」×「内側から見た日本と外側から見た日本」、「青春」×「姉と弟」……と、キャッチーなテーマに、対比と衝突をかけ合わせ、見事にドラマを生みだしています。

このように勢いまかせではない作り込み・たしかな技術が横たわっている、そんな作風が持ち味だと言えるでしょう。

さて、この『espcomplex』シリーズは、タイトルからして「超能力(ESP)」と「劣等感(complex)」の複合語でこれまでの作風の集大成を示唆しているわけですが、加えて「少年誌的王道」を大テーマとして貫く長編へのチャレンジが清々しい意欲作です。

あらすじや登場人物紹介は、方便凌による『espcomplex』のレヴューを参照していただくとして、この『espcomplex 2』では、世界観やキャラクター紹介が一巡し、「あいつ」とか「代表」をはじめとした、代名詞で匂わせる伏線が色濃くなり、能力バトルものへの引きを魅せるなど、大作感が漂い始めました。

「能力もの」は数あれど、その「代償」にフォーカスを当てたものはそれほど多くないので、それを職人・シンク氏がどう調理するかたいへん興味深いところです。そこが凡百のバトルマンガとの差別化ポイントですから、単なるギャグ要素として消費せず、「劣等感」をバネにするなり、生かす展開になれば、きっと頭一つ抜けることでしょう。

また、シンク氏は「ストーリーを進めるだけ」という、長編マンガが陥りがちな罠を許さないでしょうから、短編として毎回オチをつける技術・構成にも注目です。同人誌という薄い本なのに、物足りなさを感じさせないサービス精神は、本当に清々しいの一言です。

繰り返しになりますが、『espcomplex 2』の巻末は良い「引き」を見せています。まさに、読み始めるにはちょうど良いタイミングです。

(甘茶茂)

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ABXXX

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「espcomplex2」 / ABXXX
販売価格(税込): 315 円
A5判 36ページ
発行日: 2014/02/02